赤ちゃんが産まれたら、母乳、ミルク、混合栄養などの希望はありますか?
よく分からないけど出れば母乳で。
外来で妊婦さんとお話ししていると、よくあるやりとりです。
助産師である私は、母乳育児を推進するひとりです。
今回はタイトルにあるように、妊娠中から出来る母乳育児の準備について私なりの考えをお伝えできればと思います。
母乳の分泌が緩慢であったり、おっぱいをあげることで生理的嫌悪感を感じる症状がある人、薬の内服が必要で母乳育児が難しいこともあります。
ミルクを否定している事はありませんので、それだけは最初にお伝えしておきます。
今回の記事では、母乳育児の中でも妊娠中から準備しておくと良いことをメインにお伝えします。
正しい授乳の方法や、コツ、ポイントは長くなってしまうので別の記事でご紹介できればと思います。
母乳・ミルクのメリットデメリット
母乳のメリット
赤ちゃんのメリット
- 母乳には赤ちゃんに必要な栄養素がすべて含まれている。
- 赤ちゃんの成長にあわせて成分が変化する。
- 消化吸収しやすいため、アレルギーになりにくい。
- お母さんからの免疫物質が含まれているため、病気になりにくくなる。
- 母乳を飲むことで、顎の筋力を使う。それによりあごの発達を助け、健康な歯の基礎をつくる。(1クールの授乳でフルマラソンを完走するくらい体力を使うと先輩から習いました)
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを減らせる。
- 新鮮な母乳をいつでも安心して飲める。
- お母さんとのスキンシップにより安心感を感じることができる。
- 知能指数が高くなったり、将来の肥満を予防したりするとも言われている。
お母さんのメリット
- 赤ちゃんにおっぱいを吸われることで、子宮の収縮が促され、子宮の回復が早くなる。
- 母乳を産生することでカロリーを消費し、体重の減量につながることも。
- 乳がん・子宮体がん・卵巣がんにかかるリスクが減る。
- 閉経後の骨粗しょう症予防になる。
- ミルクと比較して経済的である。
母乳のデメリット
- 赤ちゃんがどのくらい飲んでいるかわからないから不安。
- 乳頭輪が切れてしまい痛みを感じることがあるかもしれない。
- 家族に手伝ってもらいたいのに、自分しか授乳ができない。
デメリットについては、しっかりと準備したりすることでデメリットではなくなるかも?
ミルクのメリット
- 家族に手伝ってもらえる。
- どの程度飲んでいるかが可視化できて安心。
- 外出中の授乳場所を選ばない。
ミルクのデメリット
- お金がかかる。
- 外出時の荷物が増える。
- 哺乳瓶の消毒や、ミルクを作る手間がかかる。
母乳の基本情報
母乳分泌の仕組み
- 赤ちゃんが産まれた後に胎盤が剥がれて外に出てくる。
- 胎盤が剥がれると、プロラクチンというホルモンの活動の抑制が解除され、母乳の産生が始まる。(プロラクチンは乳汁の産生に必要なホルモン)
- プロラクチンは乳頭刺激を受けることにより分泌される。
- 乳頭刺激を受けることで、オキシトシンというホルモンも分泌され、産生された乳汁を外に搾り出す。
おっぱいを分泌させるためには、
赤ちゃんに乳頭を吸わせることが大切!
分娩後赤ちゃんが寝てしまって吸わない時はかわりにマッサージを。
産後直後の母乳育児の実際
私の勤めている総合病院では母乳育児が軌道に乗るようにお手伝いをしています。
実際赤ちゃんを産んだ後、母乳育児を軌道に乗せるためにはどのような生活が待ち受けているのでしょう?
- 分娩直後は分娩台で赤ちゃんも覚醒!!よくおっぱいを吸ってくれます。
- でも、、、その後は赤ちゃんも初期嘔吐と言って羊水を吐いて気持ち悪そうだったり、疲れていて眠いのか授乳をしようとしても寝てしまっていて吸わせられなくて困ることも。
母乳も全然出てないし、赤ちゃんも吸わないし、大丈夫ですか?
母乳は吸わせているうちに出てくるようになります。寝てて吸わないようであればマッサージをしてみて下さい。これから赤ちゃんの活気が出てきて今度は寝てくれないという悩みに変わりますよ。
赤ちゃんは産まれてすぐは、お弁当と水筒を持ってきているとも言われているので大丈夫。
- 産まれて時間が経過すると赤ちゃんの活気が上がってきます。授乳を何回しても、ベットに寝かせるとすぐに泣いてしまうこともよくあります。
こんなに吸っているのに寝ない。母乳が足りていないのではないですか?
産まれて2日目は特に、いくら授乳しても赤ちゃんは寝ないことが多いです。頻回に授乳することによって母乳分泌は増えてくるので大丈夫。
でも、疲れは最大の敵なので赤ちゃんは預かるので寝てきて下さい!!
- 頻回授乳を続けていると、母乳分泌が増えてきて赤ちゃんもまとめて2〜3時間寝てくれるようになってきます。
やっとまとまって寝てくれて、だいぶ楽になりました。
妊娠中に出来る事
これまでの内容を踏まえて妊娠中に準備しておくと良いことは何か考えてみました。
どんな栄養法で育てたいか考える
まずは自分が母乳育児をしていきたいのか、混合栄養でやっていきたいのか、ミルクで育てたいのか考えておきましょう。
その際、実際に周りの経験者の話を聞いたり、インターネットで情報を調べたりしてみて下さい。
ただし、周りの情報を鵜呑みにしすぎないことも大切です。迷った際にはお産をする施設で助産師に相談してみても良いと思います。
家族に伝える
色々調べて、自分の思い描く栄養方法が決まったら、家族にも伝えておくと良いと思います。
あなたが母乳育児についてあまり知らないように、パパになる旦那さんや、産後に手伝ってくれるかもしれないご家族も母乳育児について知らないことが多いでしょう。
産後に母乳育児が思うように上手くいかず、家族からの心無い言葉に傷ついている方は一定数いらっしゃいます。
妊娠中から知識を共有することで、必要のない心の傷や軋轢を産まずに済むかもしれません。
マッサージ
産まれた後の赤ちゃんは、何回も何回も授乳を繰り返すとお伝えしました。
マッサージを妊娠中からすることで、
- 乳頭に溜まっているゴミを取り除き、分娩直後からの母乳分泌が期待できる。
- 皮膚が丈夫になり、赤ちゃんが吸っても痛くない、もしくは傷ができにくい乳頭輪になる
という効果が期待できます。
産後の授乳で乳頭が切れた、だとか赤ちゃんに吸われる授乳の時間が苦痛とならないように是非ご準備を。
マッサージの方法
- 胎動を感じ始めてから開始しましょう。
- 乳頭輪を刺激すると子宮の収縮を促すことがあるので、切迫早産気味であると医師から言われている人は、乳頭輪にオイルを塗って保湿する程度にしましょう。
- 乳頭輪に指を当て、爪の色が変わる程度の力でほぐしましょう。
- 入浴中などに実施すると良いでしょう。
近くに駆け込み寺を探しておく
母乳育児をしていると、母乳が足りているのか心配になったり、乳腺炎になったりと相談をしたくなることがあるでしょう。
出産した病院で対応してもらえることもありますが、駆け込み寺となる施設を確認しておくことも大切です。
助産院
出張型
クリニック
などの施設で母乳ケアを実施していると思います。
急な時に困らないように、妊娠中に確認しておきましょう。
妊娠中に用意しなくても良いこと
哺乳瓶、搾乳器、ミルク、乳頭保護器などなど
授乳に関連する物品は様々売っています。
妊娠中に用意した方が良いのかな?と不安になると思いますが、基本的にこれらの物品は入院中に授乳をしてみてからの購入で遅くはないでしょう。
人によって必要となるものは違います。
どこで売っているか、などの確認はしておき、退院に合わせて必要なものを用意しても遅くはないと思います。
今回は妊娠中からできる、母乳育児の準備についてまとめてみました。
母乳育児に関してお伝えしたいことは、まだまだたくさんありますので、随時更新していければと思います。